知る、倖せ、嫉妬

TSUTAYAってやっぱり蔦屋重三郎に関係あるのかな?」と聞かれて、
「どうでしたっけ?」と言いながら、携帯でGoogle検索しようとしていたら、
「すぐ調べる癖、昔から変わらないね。当時は辞書だったけど」と言われた。
なるほど、偏りはあるものの概ね好奇心旺盛な性格とみえる。両親に言わせると、赤ん坊のころ、自分の右手を盛んに眺めていたそうだから、目に見えるものへの興味は昔から失っていないようだ。
ちなみに果たして、TSUTAYAの名前の由来のひとつは、「蔦屋重三郎にあやかって」だそうだ。

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小学生の頃、やたら調べ物学習をやらされた。情報自体はすぐに古くなってしまうけれど、情報の調べ方を知っておけばいつでも更新できることを考えれば、大事な視点だと思う。
経緯は忘れてしまったが、ある時自動車販売について調べることになり、近所のディーラーに話を聞いて回った。各社で対応が違って面白かった。
某社はあまりにも適当だったので、どれくらい適当か確かめようと、自分が知っている内容についてあえて聞いてみた。「日本で一番売れている車は何ですか?」「パワーステアリング(ハンドルを軽くする装置)を開発した国はどこですか?」。それぞれ(当時の)答えは「カローラ」、「日本」なのだが、得られた回答は「え?スカイラインとかじゃないの?」「え?ドイツかな?ドイツにしとこう」とさ。
ちなみに、一番対応が丁寧だったのは某ドイツ社メーカーだった。車を買うはずもない小学生に、ありがたいことである。

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和田勉ワダエミは夫婦である。
スペースシャトルに翼はいらない。
映画「隠し剣 鬼の爪」の題字は緒形拳による。

…知ることは楽しく、へぇーと思うたびに微笑んできた私だが、いつの頃からか、知らない方が幸せだ、と思うことも多くなってきた。
そう、知った気になるのは楽である。
「あの人はすごい」「あの人はいい」と神格化してしまえば、いちいち判断はいらない。ただ、羨めばいい。嫉妬すればいい。
それはすなわち現実に対する思考ストップであり、いつかは心の充足を得られるという盲信でもある。実際のところはどうなのか、細かいところはむしろ知りたくない。

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そんなある時、同窓会について書かれた高橋秀実氏の一節を読んで、やっぱりそうだような、と思った。

しかしこの歳になると、どの道に進んでもそれぞれしんどいだろうと想像できる。みんな大変なのである。大変なのに、変わらず生きていることをお互いに讃え合いたくなるのだ。

しんどくても、ふがいなくても、実感がなくても、地に足付けて、目をかっぴろげて生きていきたい、と思う。