2012-2013

高校のときよく行った映画館に久しぶりに行った。
ひとつはその頃久しぶりに復活した名画座で、一連の復活記念上映のなかで成瀬巳喜男の映画を観た記憶のあるその場所は、当時名画座にしては綺麗で結構な設備を備えていると評判だったのだが、今となっては映像の粗が目立つというか、デジタルに慣れた身としては少し残念に思えてしまうあたり、年月が経ったことを思った。
もう1件の方は、当時から「汚いなぁ」と思うような地下にあった映画館で、静かなシーンでは電車が通る音が聞こえるというヤンチャぶりだったのだが、記憶より小さかった他はやっぱり印象は変わらず、やっぱり電車の音は聞こえた。もうすぐ閉館だそうである。

アフタースクールが面白かったので。マイナーなのかと思っていたら割と好きな人が多いということに気付いた。

  • RED

字幕なしでもストーリーがわかります。

ウォーターゲート事件にせまる若手記者の姿を描く。事件の内容を知らないとストーリーについていくのが難しいが、この手の作りの作品が好きだとあらためて実感。
起伏は少ないが緊張感のある映像が続く。レッドフォードの音声解説も興味深い。

流石、の西川美和監督作品。いったい登場人物たちはそれぞれ何を考えていたんだろう、と思索は絶えない。結婚してから観たのでなおさら面白かった。

  • 未知への飛行

安定のシドニールメット監督作品。限られた空間での会話劇なのに、そこは「十二人の怒れる男」の監督、緊張感のある展開は見事。ヘンリーフォンダも頼れる米国大統領ぶり。

  • 人生の特等席

子供とうまくいってない偏屈な老人イーストウッド…という設定からして否応なく「グラントリノ」と比べてしまうが、残念ながらグラントリノのほうが圧倒的にいい。ストーリーがかみ合ってない。
余談だが、ちょうどそのころ「その数学が戦略を決める」という本を読んでいて、野球でもデータに基づく分析のほうが専門家の観察眼よりも優れているという内容を読んでいたので、何だかなぁ…という感じではあった。

  • あなたへ

高倉健主演&降旗康男監督作品、病気の妻 田中裕子、セピア色の回想映像、時折流れる妻の歌声、制帽と敬礼、、、と、たとえば『鉄道員』『ホタル』を想起せずにはいられないが、前2作と比べて、作品も健さんの演技も、格段に洗練されている。すなわち受け手にも相応の感性と年輪が必要。

  • アルゴ

イラン革命時の、米国人脱出劇。当時の雰囲気や、異文化・暴動に対峙する恐怖などがよくでていて、予想よりも展開は地味だったが、それもまた却ってリアリティがあり、ある程度展開はよめるのに緊張感をきらさず、でも重くなくポップで、楽しめた。主人公の人物描写(なんで別居してるの?)とかが少々雑だった印象。それにしても、中東にちょっかいだしては墓穴をほるという、まったく昔っからアメリカのやっていることは変わらないのね。

男子校育ち&高校のころはスネていたので、男女の近さというかキラキラした感じはいつまでたってもどこか(勝手な)憧れをぬぐいきれなくもないが、本当に戻ってやり直したいかというと、全然そんなことはない閉塞感、すなわち価値観の選択肢の狭さであり、大人とのどっちつかずの関係であり、自身の根拠のない自信であり、それでいて定まらない軸と不安であり、他人の目であり、惚れた腫れたに巻き込まれる面倒くささあるいは巻き込まれない寂しさとかのそれである、という雰囲気がとてもよくでていた。
そして、そんなあの頃の自分に言いたい、君が見ている世間や評価軸は非常に限定的なのだから、こんなこと何の役に立つのかなんて考えたってわからなくて当然だし、何の苦労も不安もなく成功する人なんて(一部を除いて?)いないのだから、恐れず思いつくままにやってみなよ、という年寄り特有の戯言が描かれているような気がして、ストーリー的にはすっきりしないのだろうが心情的にはしっくりくる。飛行機で途中まで観て、途中までよかったのでどんなもんだろうとずっと気になってい、評判がいいみたいなのでやっぱり観てみたのだが、最後までよかった。
若い役者さんたちがみんないい。橋本愛さんはスクリーン映えしますね。が、個人的にはその友達の実果の役の人の方が好みだったりするのは内緒。

2011-2012

  • ステキな金縛り

ステキな金縛り スタンダード・エディション [DVD]

ステキな金縛り スタンダード・エディション [DVD]

三谷映画は『ラヂオの時間』が結局一番いいのではないか。

大泉さんはあくまでも北海道とともに。

モテキ DVD通常版

モテキ DVD通常版

モテキっていうより古典的な三角関係×2+αだよね。

http://www.foxmovies.jp/time/information/about/about.html
飛行機の中で。仕掛けを思いついて作り始めたけどオチがまとまる前に終わっちゃった感じ。

http://www.liargame.jp/index.html
多少のブレはあれど大体ああ落ち着くしかないよね、という。

どうもストーリーとキャラ設定が雑だなぁ…と思っていたら、元は3時間以上ある作品を海外上映用に2時間20分に編集したヴァージョンだったらしい。三船敏郎が「退避!」と叫ぶところが好き。

  • 永遠の僕たち

予備知識なしで観たら加瀬亮が不思議な役で登場。

だんしとわたし

先日古い友人の結婚式に出席して、久しぶりに会った高校の友人と話していたら、当時の私の印象というと「落語を聴いていた」ことだという。なるほど、どうして興味を持ったのかよく覚えていないが、同級生から志ん生の後生鰻など借りていた記憶がある。
映画も好きだったので毎回「キネマ旬報」を読んでおり、そこで弟子が連載していて、どうも談志という面白い人がいるらしいというのが談志を知ったきっかけだったと思う。だんだん落語というより談志が好きになった。
当時はYoutubeニコニコ動画もなく、本やCDやDVDやVHSを購入するお金もなく、自習室を使うために通っていた図書館でよく借りてきては読んだり聴いたりしていた。その結果、かどうかは知らないが、受験に落ちて浪人した。
初めて生でみたのは浪人中、今は無き新宿厚生年金会館(2000人くらい入ったと思う)での「短命」と「らくだ」であった。人間は悲劇的な描写を聴いて笑うんだ、と、残酷さと多面性に気付いた。
後年、縁あって一度インタビューに同席する機会があり、偉そうに私も質問したり笑い転げる幸運があった。ツーショット写真やサインをねだるのは自重したが、握手はしてもらった。その時の録音はどこかにあるはずなのだが、担当された方の机に埋もれているのかいまだ受け取れていない。
 ※  ※
人の言うことにいちいちケチをつけるものではないが、「歯に衣着せぬ毒舌で知られ」「カリスマ的人気を誇った」「昭和の偉人」という表現は、言いえているようで全然違うと思う。
日ごろ常識とか規則とか怠慢に隠れて受け流している物事を、ジョークの形で(それも「ジョークはきついほどよい」)、あるいは落語の噺として発信し続けていたわけで、喩えると陳腐な例になるが、世の中の裸の王様を相手に、裸だ裸だと叫んでいたのである。高校から大学にかけて私に友達が少なかった一因は、こうした談志一流の表現にかぶれていたからであり、多少なりとも大人になれてまともになったのは、その表現の深層を多少なりとも消化できたからだろう。
形は違えどこうして談志に救われてきたファンたちは、彼が何を目指し苦しんでいたかを理解し、楽しみにし、談志もそんな猪口才な期待なんぞ飛び超えてやろうと変革してきた。独演会は他にない緊張感と暖かさと一体感で包まれていた。…などと書いたら、「犬好きに悪い人はいない」みたいなナルシズムになってしまうかしら。
いずれにせよ師匠小さんをはじめ昭和の芸の系譜にあるものの、その真骨頂は平成以降、特に病と闘う過程で築かれたものだろう。
 ※  ※
語り継がれる名演は数多いが、2007年末の「芝濱」を生で聴けたのは幸運であった。
2010年4月の「首提灯」も聴いている。(「引退を示唆」と報じられている記者会見の時ですね)。
最後は2010年末の「芝濱」。2階最後列の端で聴いた。報道によると癌の再発が分かった後であり、また結果的にほとんど最後の大ネタであったようだから感慨深い。
友人はご存じのとおり私は下戸であるが、なぜかうちにある日本酒など、今宵はひっかけて寝てみようか。そうしたらひょっとすると、今日が夢になるかもしれない。

馬肥ゆる

ドラッカー名著集1 経営者の条件

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経営者の条件。ドラッカー比較的初期の作品。きわめて名著。マネジメントは途中で挫折中だが、こちらは仕事術のような内容なのでさらっと読めた、が、単なるハウツー本とは一線を画し、とても本質的、月並みだが天才。
現場力革命

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現場力革命。攻殻機動隊で知られるProduction IGの社長の本。何の経営経験もない一作業者が、地道にがんばって(なりゆきで)組織を作り上げていくあたり、日本人好みかしら。
失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

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失敗の本質。太平洋戦争における各戦闘の敗北を、組織論の観点から考察した有名な本。現代の企業経営にも通じる点が多々あり気が滅入る。

  • あいまいな戦略目的

たとえば沖縄戦では、上級司令部は航空決戦を主張、現地では地上戦闘を中軸とする長期持久作戦が主張され、目的が共有されていなかった。

  • 人的ネットワーク偏重の組織構造

相手の体面を慮り、曖昧な指示で先方の自発的な変更を期待するようなコミュニケーションをとった。

  • 主観的で「帰納的」な戦略策定 空気の支配

初めにグランド・デザインや原理があったというよりは、現実から出発し状況ごとに時には場当たり的に対応し、それらの結果を積み上げていく思考方法をとる。

  • 学習を軽視した組織

ガダルカナル島で実施された、正面からの一斉突撃という日露戦争依頼の戦法は功を奏さなかったにもかかわらず、他の戦闘でも繰り返し行われた。
【結論】自己革新の失敗
⇒日本軍の最大の失敗の本質は、特定の戦略原型に徹底的に適応しすぎて学習棄却ができず自己革新能力を失ってしまったことである。
たとえば軍事組織は、平時から戦時への転換を瞬時にして行えるシステムを有していなければならない。とっさの臨機応変の対応ができる人物は、定型的知識の記憶に優れる学校秀才からは生まれにくい。平時は年功序列を基準とした昇進システムでもいいかもしれないが、徹底した能力主義も必要である。

PowerPointビジネスプレゼン ビジテク 図を描き・思考を磨き・人を動かすプレゼンテーション

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ある日自分の作ったパワポのあまりのセンスのなさに恐れおののいていろいろ見た中の一冊。充実してていい本だった。
カラー化 (ビジネスドキュメントの演出技法)

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リーダーシップの旅  見えないものを見る (光文社新書)

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いい本。
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マグロ船仕事術―日本一のマグロ船から学んだ!マネジメントとリーダーーシップの極意

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天高く

その街のこども 劇場版 [DVD]

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その街の子ども。阪神大震災をテーマにした映画(元は2010年のNHKドラマ)。
「絶対安全とかそんなの嘘でしょ」とか、どこかで聞いたようなセリフが聞こえてきてドキッとした。渡辺あや脚本。
奇跡(通常版) [DVD]

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奇跡。同じ監督の「歩いても歩いても」のほうが好きなのは、自分は親の子どもではあるが、子どもを持つ親ではないからかもしれない。
死刑台のエレベーター [DVD]

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死刑台のエレベーター名画座にて。過剰な偶然とあまりにも考えなしの登場人物は苦手である。コクリコ坂から。ファンも詳しい人も沢山いるので滅多なことは言わない方がいいのだろうが、想像するところ、ごろうさんは、カリオストロとか子どもの頃観たお父様の初期の作品が強く印象に残っているんじゃないだろうか。

http://www.usagi-drop.com/
原作読んでいないので特に思い入れなく観賞。

お天道様と米のめしは

羽海野チカの原画展に行ったら、しばらく前にやっていたドラマのカットが表紙の雑誌が売っていて、内容は羽海野さんと脚本家の木皿泉夫妻の対談、前から気になっていたドラマ&脚本家だったので買って読んでみたら観たくなり、結局一晩で全部観てしまった。
題名は「Q10」、高校生(佐藤健)がロボット(前田敦子)に恋をする話である。

視聴率があんまりふるわなかったとかで(それでも二桁とってるということは1000万人が観てるんだから大したことだと思うが)、なるほど、確かにとりあげられる楽曲が北山修の「さらば恋人」とか「戦争を知らない子どもたち」とか「風」とか、あるいは志ん生の「唐茄子屋政談」という落語がでてきたり、しかもそれらが内容的にとてもいいんだが、西野カナを聴いているような高校生にはウケないんだろうなぁ(←偏見)。かといって北山修を聴いていたようなうちのオヤジの世代は、AKBと仮面ライダーの共演と聴いてもチャンネルを回すキッカケにはなるまい。

…前置きが長くなったがそういうわけで個人的にわりと気に入った。
私などはドラマにあまり思い入れなく観ているので、主演の2人以外の話の時間が長くても、たまに好みじゃないシーンがあっても気にしないで、作り手の心意気と心地よいセリフ回しを素直に楽しんだ。
どうでもいいこととどうにもならないことでできている世界に、どう意味を与え、どうつなげていくかが大げさに言えば生きていくということであるならば、どのような言葉でそれを紡ぐかというセンスはその縮図である…という難しく気取った言い方より、「取り返すっていうのは、たぶん次に行けるってことだよ」とか「若旦那、生粋の人間ですねぇ」とか「がーん」とか「空も、はにかんでいるのですか?」とか「中尾。」とかのセリフのほうが心に届くということである。

佐藤健さん、「BECK」でも思ったけど、松本隆の詞にでてきそうな繊細さがいまどき珍しく、コメディのセンスもある感じ。いわゆる「旬」なんでしょうが、息の長い活躍を期待します。
前田敦子さん、一部で相変わらず風当たりが強いようだが、だてに「いま日本でもっとも視線を浴びているひとりじゃないんだぞ」、とでもいうような、演技力とかを超えたパワーがあったように思う…とまた難しく気取った言い方をしたが、要するにキュートです。
で、話を対談に戻すと、羽海野さんも木皿夫妻も、徹夜はもちろん病気になっちゃうくらい、「自分にウソをつかない」仕事をするためにたいへんな苦労をしていることを改めて認識する。昭和の終わりの生まれはついつい「お天道様と米のめしはずっと自分についてまわってくる」と思ってのんのんと暮らしてしまうので忘れがちだが、お天道様はついてくるけど、米のめしは努力しないとついてこないようで。

Q10シナリオBOOK

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二度寝で番茶

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