お天道様と米のめしは

羽海野チカの原画展に行ったら、しばらく前にやっていたドラマのカットが表紙の雑誌が売っていて、内容は羽海野さんと脚本家の木皿泉夫妻の対談、前から気になっていたドラマ&脚本家だったので買って読んでみたら観たくなり、結局一晩で全部観てしまった。
題名は「Q10」、高校生(佐藤健)がロボット(前田敦子)に恋をする話である。

視聴率があんまりふるわなかったとかで(それでも二桁とってるということは1000万人が観てるんだから大したことだと思うが)、なるほど、確かにとりあげられる楽曲が北山修の「さらば恋人」とか「戦争を知らない子どもたち」とか「風」とか、あるいは志ん生の「唐茄子屋政談」という落語がでてきたり、しかもそれらが内容的にとてもいいんだが、西野カナを聴いているような高校生にはウケないんだろうなぁ(←偏見)。かといって北山修を聴いていたようなうちのオヤジの世代は、AKBと仮面ライダーの共演と聴いてもチャンネルを回すキッカケにはなるまい。

…前置きが長くなったがそういうわけで個人的にわりと気に入った。
私などはドラマにあまり思い入れなく観ているので、主演の2人以外の話の時間が長くても、たまに好みじゃないシーンがあっても気にしないで、作り手の心意気と心地よいセリフ回しを素直に楽しんだ。
どうでもいいこととどうにもならないことでできている世界に、どう意味を与え、どうつなげていくかが大げさに言えば生きていくということであるならば、どのような言葉でそれを紡ぐかというセンスはその縮図である…という難しく気取った言い方より、「取り返すっていうのは、たぶん次に行けるってことだよ」とか「若旦那、生粋の人間ですねぇ」とか「がーん」とか「空も、はにかんでいるのですか?」とか「中尾。」とかのセリフのほうが心に届くということである。

佐藤健さん、「BECK」でも思ったけど、松本隆の詞にでてきそうな繊細さがいまどき珍しく、コメディのセンスもある感じ。いわゆる「旬」なんでしょうが、息の長い活躍を期待します。
前田敦子さん、一部で相変わらず風当たりが強いようだが、だてに「いま日本でもっとも視線を浴びているひとりじゃないんだぞ」、とでもいうような、演技力とかを超えたパワーがあったように思う…とまた難しく気取った言い方をしたが、要するにキュートです。
で、話を対談に戻すと、羽海野さんも木皿夫妻も、徹夜はもちろん病気になっちゃうくらい、「自分にウソをつかない」仕事をするためにたいへんな苦労をしていることを改めて認識する。昭和の終わりの生まれはついつい「お天道様と米のめしはずっと自分についてまわってくる」と思ってのんのんと暮らしてしまうので忘れがちだが、お天道様はついてくるけど、米のめしは努力しないとついてこないようで。

Q10シナリオBOOK

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二度寝で番茶

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