暇も元気もないこのごろ、唐突にAKBについて考える。

「握手券や投票権といった特典を付けることにより、熱心なファンが同じ商品を複数買うように誘導する」いわゆるAKB商法、個人的にはそんなに目くじらをたてるものでもなく、至極まっとうな気がする。
2010年のCD売上トップ10が嵐とAKB48だった、だけどAKBは特典目当ての購入者が居るから正確な数字ではない…といった声があるが、的外れで、あらためて指摘するまでもなく、今の世の中、音楽を聴くにあたってCDを買うという選択肢を採用するインセンティブはどこにもない。YoutubeiTunesTSUTAYAあたりで事足りる。
随分前から、CDという「モノ」の必然性はなくなってきた。では(コンテンツ…というと曖昧だから無粋に「データ」と割り切ってしまおう)音楽データを売る時代なのかと言うと、それもまた過去のものになりつつある気がする。どこで読んだか忘れた受け売りだが、「権利」を売っているととらえるべきである。G-mail等々、クラウド時代のサービスは、端末に依存しない。パソコン、ケータイ、どこからでも見れる。一度Web上である曲を買って聴く権利を得たら、データをおとしたウォークマンが壊れても、再度聴けないと納得されない、そもそもネットワークがもう少し発達すればローカルにおとす必要さえなくなる…、そんな趨勢だろう。
プロモーション等々を担っているのがCD会社であるなど、音楽業界がまだCDを基盤とした構造をしているから、CDに特典を付けているだけであって、特典そのものの権利を売っていると考えれば、(必要なくなってCDが廃棄されてエコじゃないとか転売可能だとかの問題があるとはいえ)、至極まっとうな売り方である。ま、あくまでも特典という形にしないと、さすがに「お金出した分女の子の手を握れます」っていうのはえげつないしね。
どんなに規模が大きくなっても握手会を続け「会いに行けるアイドル」のコンセプトを貫いているのは、そのあたりが生命線であることを運営者が認識しているからなのだろう。
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特典を付けないと売れない、歌手なら歌で勝負しろ、口パクのくせに…という批判もまた的外れで、そもそも(少なくとも当初からの)ファンは彼女たちに華麗なパフォーマンスを期待してはいまい。歌と踊りが観たければ劇団四季や宝塚に行けばいい。
「推しメン」と呼ばれるメンバーを選んで、応援と言う名の投資をして、彼女が成長し活躍していく姿を見守るのは、プレステ上で三国志をやっている感覚と本質的に何ら変わりはない。
決定的なアイドル不在の昨今、言わば繰り上げ当選のように雑誌の表紙を飾るようになっていた彼女たちが、一般的に認知されてきた今、当初からのファンは恐らく感慨と寂しさを抱えていることだろう。
PSPで「恋愛ゲーム」ができて大ヒットしているのも、原点が秋葉原ドン・キホーテビルであることも、偶然ではあるまい。
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楽曲のほうはといえば、そこは秋元康氏の面目躍如、I want you、I need you、I love you、ドンドン近づくその距離にMAX ハイテンション…って、中学生が作ったんじゃないんだから…という単純明快さ、そこは本気を出せば「川の流れのように」を書いちゃう人だから百も承知で、行間を読めと言った風情もヘチマもない分かりやすさですそ野を広げているのだろう。
その分(これも受け売りだが)歌詞が男性…というか男の子目線で、つまりは男心を女の子が唄うという倒錯があるわけで、そのひねりがミソである。
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年も年だし、長々書いてきたほどの思い入れはないが、(私を知る人にとっては意外かもしれないが)モー娘。をはじめ、若い女性が元気に歌って踊って…というのには意外と好意的である。
競争のないぬるま湯のゆとり世代が、寝る間も惜しんで、人気投票などという酷な場にさらされて、それでも笑顔を振りまいて、その上「ブームはさる。だから個々が努力をして実力をつけなければならない」という旨の冷静で冷酷な現実に向き合っていうのを観て、あるいは、たとえば「わかったふりして知ったかぶりで夢も久しぶり」というくだりを聴いて、まぁ自分もまた頑張ろうと気分を切り替えるのも、そう悪いことではなかろう。