立川談志 日本の笑芸百選

http://www3.nhk.or.jp/omoban/main1202.html#20051202009
すごい番組だ。さすがNHK。こんなん誰が見るんだろう。談志が、落語、講談、漫才、浪曲、喜劇役者、お笑い芸人について語り明かす。当時の映像も、細切れながら多数登場。
何度も公言していますが、私は落語が好きです。志ん生や円生の真似をして、彼らの思い出話をする談志の姿を、ニコニコして眺めている。落語っておもしろい。その語り口、リズム、登場人物の生き様がここちよい。やさしい。
…こんなことを世間で話せば、たちまち総スカン、白い目で見られる。ちょっとやってみても、キョトンとされる。上記の記事だって、知ってる人が見れば、涙を流して喜ぶはずだ(たぶん)。こんなこと言ってる私がオカシイんですかね、師匠。
「伝統芸ですから、当然今はない、風物が色々とでてきます。それでも、ちょっと前までは、それらはけっこう知られていた。しかし今は無い。なら、どうする。そういう昔のものに対する、いやな言葉だけど、憧憬というか、思い入れというものがある者だけが、やる資格があり、もっと言えば聞く資格があるということでしょう」と談志。それでいいんですかね、師匠。私はくやしい。
他の芸人も多数登場。中でも興味深かったのが藤村有弘。通称「バンサ」。その昔『ひょっこりひょうたん島』のドン・ガバチョ役をやっていたそうで、ピアノを、本人いわく「メチャクチャ」にさらりと弾いてのける。圧巻は、「世界の会話」。要するにタモリがやるあれ、…と言っても、タモリといえば「いいとも」であって、四ヶ国語マージャンとか、もはや知られてないのかネ。で、談志が「タモリには悪いが、ケタが違う。プロとアマチュアの差だ」と言っていたのも納得の名人芸。「上をむいて歩こう」を、多国語のメドレーで(もちろん適当なニセ語)で歌っていた。すごい。言葉は無茶苦茶だが、了見が伝わる、姿は粋で、哀愁にまで満ちている。
話にだけ聞く、見てみたい芸人、偉人は山程いる。若かりし頃の森繁久弥和田信賢(アナウンサー。玉音放送を放送したのもこの人)、舞台の上の森川信…。
現役の人で、松元ヒロがでていた。いいぞォ! 久々のヒット。天気予報のアナウンスにあわせてパントマイムやるっていうだけなんだけど、くだらなくっていいや。たまたま隣で見ていた母親と大笑いした。
「あるある〜」やら「ふぉー」とか言って喜んでいる人や、エレキなギターをかきならし、日本語になじむとは思えないラップな口調で歌っている人々を、何も馬鹿にするわけではなし、さげすむわけでも無し、逆にうらやんだり萎縮するでもなし。ただ、彼らに比べ、見向きもされないという事実、いや、たとえ見てもらったところで、全然理解されず、面白いと思われない現実。もはや古臭い、過去の遺物に過ぎないのだろうか。太田(爆笑問題)も、あだち充も、東京ラブストーリーのプロデューサー(101回目のプロポーズだったかな)も、みんな落語好きですよ。ひとりで、外国語を喋っているような、語り合う友のいない孤独感。どうだい鉄さん、興味はないかい?  別に、古いことを知らなくてもいい、せめて、価値観を共有しようと思ってみる人、世の中の一辺倒な見方はおかしいと思ってみる人はいませんかね。ただ、ひたすら、寂しい寂しい寂しい。
「おい、あの鳥を見ろ。俺、さっきから眺めてるんだけどよ、池の脇にとまったまま、ずっと動かねぇんだ」「へー。魚でもとるんですかね」「ひょっとすると身投げだ」 古今亭志ん生