私の好きな漫才 〜物故者篇

お笑いの好みをひとつ。そもそも漫才特有の面白さとは何か。漫才という形をとる意味は何か。何といっても「2人でやる」ことだろう。有り体に言えば、「1たす1が2でなく3にも10にもなる」ということ。私の漫才の判断基準はこれだけ。久々のお笑いブームででてきた大半の漫才師は、ただのギャグの串刺しで、叫んでるだけ、出来の悪いコントであって、芸になってない。私が好きなのは、具体的に言えば、ツッコミにひねりがあって面白い、叫ばない、間の取り方がうまい、そのコンビ特有のメロディがある、ということ。
分かりやすい例は、(いや、分かりにくいか)、いとこい。夢路いとし喜味こいし師匠。このお2人は、あまり大声をはらないし、ギャグだって特に過激さは無く下らないものである。でも面白い。あたたかい。十八番の「交通巡査」。内容は古くなっても、リズムがいいから今でも聞ける。「職は?」「天然色です」「は?」「いえ、無色(無職)のほうです」。古いなァ。(こいし師匠はご健在です)。
中田ダイマル・ラケットには、これに加え狂気がある。価値観をひっくり返し、ワケガワカラナイすごさがある。私が一番好きな漫才師です。「君と僕の恋人」のラストなんて、2人でじゃんけんをするだけなのだ。1人の女をとりあって、大の大人がやれ「アトダシをした」だの「やっぱこっちの手でやる」だの。なのに目茶苦茶おかしい。すごい。その割にはあまり音源が出回っていなくて残念。あと惜しむらくは、彼らが最初に売れ出したネタ、ボクシング漫才を見ていないのだ……って、当たり前だ。半世紀以上前の話だもの。
いつでも貸します。あと、やすきよとか、春日三球・照代の地下鉄漫才とかあるんですが、略。