桐野夏生

柔らかな頬 上 (文春文庫)

柔らかな頬 上 (文春文庫)

柔らかな頬 下 (文春文庫)

柔らかな頬 下 (文春文庫)

「ばななが好き。あの訳のわからない展開がいいじゃないですか」に、「訳のわからない展開が好きなら、桐野夏生がいいよ」といわれ、読んでみた。
桐野は実は初めてではない。かなり昔の話になるが、「顔に降りかかる雨 (講談社文庫)」など、いわゆる村野ミロシリーズ3作は読んでいる。
それで本作だが、いったいどう言えばいいものか。読後感は非常に重い。暗い。なんだか分からない。否、幻想的だとかそういうのじゃなくて、個々の場面はリアリティーがあるのだが、すべてあわさってひとつの作品となると、ふわふわしていて、「え?なんでここでこうなるの?いや、分からなくもないんだけど、え、なんか、その…」という違和感がつのり、不気味な深い印象をもたらす。
昨晩一昨晩となかなか寝付けなかった一因は、この本である。(ちなみに、他に、昼寝した、胸が痛かった、ひたすら悲しかった、などの要因がある)。
一言で言うなら、この本を薦めてくれた人の言葉通り、「桐野夏生は奇想作家である」ということになる。そして現実もことごとく奇想であることを考えるなら、なるほど力のある作家さんに違いない。