彼岸過迄

「普天間」交渉秘録

「普天間」交渉秘録

普天間」交渉秘録。収賄の容疑かなんかで捕まった防衛庁事務次官による、(起死回生の?逆ギレの?捨て身の?)回顧録。いくら日記を元にしているからと言って、詳しい言い回し等々は思い返して書いているのだろうから、「ということは自伝を作ればということですから自分を美化しているわけであり、どこまで真実が頭を垂れないでいるのか覚束ない」代物ではあるが、少なくとも一当事者の一視点からの交渉の歴史は、非常に面白くスリリングで、そんな呑気な言い回しでは片付けられない赤裸々な告発を含んでいる。沖縄県民を悪く言う気は勿論ないが、一筋縄ではいかない力学で基地問題は動いており、たとえば今日も「沖縄県の仲井真知事が馬淵沖縄担当相に米軍普天間飛行場について県外移設に取り組むよう要望した」なんていうニュースをみても、チャンチャラおかしくて額面通りには受け取れなくなる。詳細は本に任すとして、枝葉の感想。

  • 国会運営っていうのは、一般人の感覚からかけ離れた手続きをふんで動いている。
  • 「お役所仕事」も同様で、国会議員がスムーズに退場できるように車の動きを予行演習するって、分かるけど、それ税金でやるの?っていう感じ。
  • 少なくとも本書を読む限り、名の通った政治家がまともな政治家とは限らないようだ。
  • 何事にも経緯がある。ちょっと入ってすぐ分かるもんでもない。
  • 記者と役人・議員は素人目には癒着ともとられかねないもたれあいがあるように感じる。関係者の動きを記者からの連絡で知るって言うのが変な感じ。
  • 小泉元首相は、つくづく力のある「政治家」だったと思う。民意をとらえるパフォーマンス、交渉の勘所をつかむうまさ、ブレない強さ。。。それは新聞の「政治」欄が「政局」欄であるように、綺麗事で済まないまつりごとを着地させていくうまさという意味での「政治家」であって、彼が本当に実施しなければならない方向性を定められる真の政治家であったなら日本もこうはならなかったろうに、と夢想すると、かえすがえす残念である。

文明の海洋史観 (中公叢書)

文明の海洋史観 (中公叢書)

文明の海洋史観。川勝平太氏が今や静岡県知事だなんて、最近知った。第一章が出色。