『あ・うん』など

あ・うん [VHS]

あ・うん [VHS]

1980年NHKドラマ、向田邦子作、深町幸男演出。
古い。確かに古い。舞台は戦前、夫が帰ると妻が玄関先に出迎える、夫は妻に手を上げることもある。二号さんも珍しくない…。ここまでくると、もはや古典だと割り切れる。現代にはないシチュエーションを借りて、描かれる人間模様。見事。
珍しくあらすじ…というか人間関係を書いてみよう。水田仙吉(フランキー堺)と門倉修造(杉浦直樹)は大の仲良し。が、実は門倉は仙吉の妻たみ(吉村実子)に惚れている。んで、仙吉もたみも、そのことに気づいている。しかも、たみも門倉をよく想っている。門倉はというと、正妻(岸田今日子)とはイマイチうまくいかず、子もできず、愛人の禮子(池波志乃)をはらませる。…という、とんでもない設定で、次々とドラマが起こるのに、なぜだかうまく均衡が取れてしまうのですね。
向田の脚本は絶妙だし、役者陣がうまいんだなぁ。派手で色男の杉浦は素敵だし、フランキーがうまい。なんとも言えず、うまい。人間の持つ、もしかしたら男特有の、弱さのようなものがにじみでていてたまらない。女性陣もよい。仙吉たみ夫妻の娘、岸本の演技やナレーションも味がある。おじいちゃん役の志村喬も、けっこう悲惨な役柄なのに、彼がやるから救いがある。日常生活の、よくわからない、機微のようなものを感じた。たぶん、所帯を持ってからの方がより楽しめる大人な作品だと思われる。
写真とエッセイで綴る姉の素顔 向田邦子の青春 (文春文庫)

写真とエッセイで綴る姉の素顔 向田邦子の青春 (文春文庫)

向田邦子 映画の手帖―二十代の編集後記より

向田邦子 映画の手帖―二十代の編集後記より