こうの史代

夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

手塚治虫文化賞をとったとかで随分評判なので、わざわざここで紹介するまでもないかもしれない。いわゆる“ヒロシマ”を舞台にした作品。でも、グロいところはほとんどなくて、3世代にわたった日常を描いている。だからこそ心に迫る。
それにしても帯のコピーは秀逸で、「読後、まだ名前のついていない感情があなたの心の深い所を突き刺します」。まさにそのとおり。最初読んだ時は、短い話なんで、ひょほほと筋を追って、「ま、こんなもんか」と思っていたのですよ。でも、読んだ後、ふと独特の絵柄が思い起こされる。突然、スクリーントーンを使ってないあの優しい画が浮かぶのです。で、繰り返し読んでみる。いやはや、こんな短い話の中によくマァこれだけ詰め込んだもんだ。細部まで行き渡っているのです。なるほど、目ェ開けて世界を見れば、これほどの日常の奇跡や繋がりが、目の前を通り過ぎている。そんな生活を侵すのが、戦争であり原爆なのか。


長い道 (Action comics)

長い道 (Action comics)

で、今日買ってきた。ある夫婦を描いた、3、4ページの短編が54連発。「夕凪〜」がよかったんで期待して読み始めたんだが、ストーリーの短さと突拍子もないキャラ設定(甲斐性のない夫と、超不思議ちゃんキャラの妻)に物足りなさを感じてしまう。…が、読み終わる頃にはすっかりこの夫婦に感化されてしまった。「荘介どの〜」がたまらなくなるのですネ(笑)。不思議不思議。色んな手法に挑戦しているのも面白い。ペンタッチ変えてみたり、サイレントだったり。構成力に拍手。
道ちゃんのキャラ、好きだナァ。嫁さんにしたら毎日楽しいかも。いや、やっぱやめといた方がよさそうだな、ある意味のだめ以上にヘンだもの…。